明け2歳。この2匹が売り立ての洗面器に「10000円」とあったらどうでしょう。
1年前の私なら見向きもしませんでした。
今なら即決で買います。
いや、この魚がのちに成し遂げる仕事の価値がわかっていたら10万円でも買います。
この写真、今は亡き我が家の種魚。下がメス、上がオス。約1年前の写真です。
結局この夫婦の仔から2匹の東大関が出ました。しかも仔引き2年目だった育成ど素人の私が育てたのに大関になったのです。つまり間違いなくこのペアは「超いい種」だったわけです。
メスは2017年の夏、らんちゅう歴半年の時に初めて矢ケ崎会長の飼育場にお邪魔させていただいたときに分けていただいたものです。その時会長はド素人の私に初心者に優しい7匹を選んで分けてくださいました。
タダみたいな良心価格で分けていただいたその7匹のうち2匹が直後の研究会で6位7位くらいに入る大活躍。それだけでもありがたいことでしたが、このメスは尾の赤が抜けていたこともあり会デビューを果たすことはできませんでした。
しかし成長は7匹の中で群を抜いていて秋には卵も産みました。このまま冬眠させずに飼えば春に産むだろうということで飼育を継続。その後、会長が私の飼育場を見に来られた時、会長は成長したこの魚を見て「おお、これ種にいいよ」と。期待が一層膨らみました。そして期待通り2018年1月に産んだのです。
一方の雄は同じく会長から。メスを分けていただいた約半年後の秋、「これ種にいいから」と分けていただいた3匹のうちの1匹でした。その時点で会長はこの雄を強くおすすめされていました。
その時の私はまだらんちゅう歴が一年足らず。なぜ会ではありえないこの尾の魚を会長がここまで残していたのかがとても不思議でした。まして種にいいとは???でした。会と種は別物という概念が全くなかったのです。でも会長を100%信じていました。この魚が種として良いとわかる鑑識眼を私も身に着けたいと思いました。
その仔たちが2歳となった今年の写真です。巣赤の2匹がこの春の2歳会でいずれも東大関を勝ち取りました。
この一連の経験は私にとって本当に大きな財産となりました。会長には大感謝です。
今では上の種の写真をみてこの魚がなぜ種として良いのか、いくつかの理由がわかります。
ただ、本当に残念なことに昨年の春はまだこの2匹の種としての価値を理解し切れておらず、2軍飼育をしてしまい生かし切ることができませんでした。
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昨晩、ある先輩らんちゅう師の方の昔話を聞きました。その方は数十年前、魚が見れなかったころ実際の価値の10倍以上の価格でらんちゅうを買いまくっていたと。知らないって恐ろしいと。
そしてその逆もあるのですね。種として本当は100万円くらいの価値のあるらんちゅうが価値ゼロのハネ扱いになる。
らんちゅう飼育者には次の3つのカテゴリーがあるそうです。
1.会用飼育者
2.種用飼育者
3.会&種飼育者
私は3番の道を追求していきたいと思っています。会での成績は追い求めます。でもよい種を探すことが良い会用の魚を探すことより面白くなってきています。
何十年かかるか、いや生きているうちに何かが見えるのかすらわかりませんが。
らんちゅう、死ぬまで楽しめそうな趣味です。